アルコール中毒ROCK

酒と病気と音楽と人生を転がり倒す。

43.『29歳』再会。

西中園主治医が西山病院院内を案内してくれた。僕が入院する病棟は解放病院の「森の広場」というところだった。喫煙所を紹介してもらった時、懐かしい顔が笑顔で手を振っていた。柳川さんと大ちゃんとえみちゃんだった。

僕が泣き出すと西中園先生が慌てて「どうしたの?何か怖かった?」と背中をさすってくれた。僕は「嬉し涙です」とは言えずにただ首を振って次は僕の病室を案内してくれて院内案内は終了した。

 

僕は真っ先に喫煙所に走った。

「金ちゃん!」

「柳川さん!えみちゃん!大ちゃんまで!」

僕ら4人は手を取り合って喜んだ。

「なんで3人揃ってるんですか!?」

柳川さんはニヤリと笑い説明してくれた。

 

「もともと大ちゃんがここに太宰府病院から

   転院してたんだよ。俺も状態悪くて2年前から

   大ちゃんからメールもらってここに入院したのさ

  先月えみちゃんが状態悪いて電話あったから

  ここを教えたんだよ。

  そしたら次は金ちゃんだったわけさー」

 

僕は3年ぶりの再会にまた涙が溢れた。

 

「ゴマちゃんはなんでも今大学生らしいよ!

   あと私、離婚してキタロウちゃんと

   遠距離恋愛中!」

 

えみちゃんが嬉しそうに言った。

「すごい!えみちゃん!

   キタロウくん元気なんだ!」

 

「元気だよー!

   私のこと相変わらずミザリーって呼ぶけど!」

 

皆んな、どっと笑った。

柳川さんが口を開いた。

 

「俺は高校の教壇に立ったけど

   生意気なヤツをぶっ飛ばしてこのザマさ!

   はーっはっはっー!」

 

皆んなまた爆笑した。

柳川さんらしいや。

 

そうか、皆んな色々あったんだなあと僕は思った。

大ちゃんというと広辞苑は相変わらずだがなんと煙草を吸っている。

大ちゃんはもう27歳になっていた。

 

「金ちゃーん、

   マルボロだよう」

 

僕は笑いながらマルボロライトを大ちゃんに見せた。柳川さんは昔からラッキーストライクだった。えみちゃんはセーラムを吸っている。

 

喫煙所は太宰府病院に比べて数倍広くて綺麗だった。真夜中のカップ麺もOKだ。

 

柳川さんが僕に見知らぬ男の子を紹介した。

男の子はペコリと頭を下げて自己紹介した。

「持田 ユウイチロウといいます。27歳です。」

 

僕も頭を下げた。

「金田です。金ちゃんでいいよ!」

 

柳川さんが口を開いた。

ユウイチロウでいいさ!な!」

 

ユウイチロウは「うんうん」と頭を振った。

このユウイチロウはCG202に目がなくてやたらと僕になついてくるようになる。

そして『チサト』という25歳の彼女がいて大人しく皆んなから「ちーちゃん」と呼ばれていた。

 

何はともあれ僕は死ななかった。

みーちゃんごめんよ。

 

 

夕ご飯が終わり昔のように皆んなで喫煙所に集まった。これまた昔のようにえみちゃんが、

 

「金ちゃん、

   アイスコーヒー作ってあげるね!」

 

と懐かしいセリフを言った。

柳川さんが煙草を吹かしながら、

 

「ここの閉鎖病棟には『ゆきちゃん』ていう

   16歳になる女の子が入院していてな、

   昼から夜8時まで開放病棟

   降りてくるんだぜ。

   今日まで外泊してるから明日紹介するよ金ちゃん」

 

「16歳ですか?」

 

「うん、

   変わり者だけど素直で可愛い子だぜ。  

   楽しみにしてな」

 

 

僕はどんな子だろうと明日が楽しみだった。

今日は初日だし早めに寝ることにした。

 

久しぶりの安息の夜だった。

 

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