アルコール中毒ROCK

酒と病気と音楽と人生を転がり倒す。

青春

44.『29歳』スケボー少女ゆき。

朝も早よからご苦労さん。 朝だよ。 僕の病室は4人部屋だが僕ともう1人しかいなくそのもう1人も長期外泊で個室みたいなもので気楽だ。 目覚めの一服をしに喫煙所に行くとえみちゃんが僕を待っていた。 「金ちゃん、アイスコーヒー作ってくるね!」 そう言う…

43.『29歳』再会。

西中園主治医が西山病院院内を案内してくれた。僕が入院する病棟は解放病院の「森の広場」というところだった。喫煙所を紹介してもらった時、懐かしい顔が笑顔で手を振っていた。柳川さんと大ちゃんとえみちゃんだった。 僕が泣き出すと西中園先生が慌てて「…

42.『29歳』戦ぎの手紙

ある日僕は飛び降りるマンションを決めた。 泣きながらみーちゃんに遺書を書いた。 みーちゃん愛してるよ みーちゃん愛してるよ 涙が止まらなかった。みーちゃん僕が死んだら悲しむかな。ごめんよ、みーちゃん。愛してるよ。 深夜0時が回った月曜日の真夜中…

41.『29歳』負けるなよ。

りんの本名は「美希」という。よって僕はいつしかりんをみーちゃんと呼ぶようになっていた。みーちゃんは僕を「にぃやん」と呼ぶが皆んなの前では「金田」と呼び捨てだった。僕らは仲良く愛を育んでいたがちょいちょいみーちゃんを怒らせてはぐぅぱんちされ…

40.『28歳』愛しのりん。

9月1日。 仕事が終わった僕は夕方からりんをドライブに誘った。市内をぐるぐる回りながらのドライブだ。 マクドナルドのドライブスルーで月見バーガーを注文すると僕達は「油山展望台」という山の山頂まで行くことにした。 油山展望台山頂に着くと2人で夜景…

38.『28歳』香椎花園デート。

次の日曜日はりんを香椎花園という遊園地に誘った。りんから「OK」をもらい愛車のワゴンRでりんの家の近くのバス停まで迎えに行った。 CG202を飲み準備万端だ。 バス停に向かって小走りに走ってくるりんが見えた。僕は車を降りて助手席のドアを開けた。 「恥…

37.『28歳』2回目の告白。

夕暮れ時、天神町の警固公園という場所でりんと待ち合わせをしていた。 りんがオレンジ色のTシャツを着て現れた。 はにかんだ笑顔が可愛い。 僕とりんは営業している屋台を物色して「天后」という名前の屋台に入った。 屋台は景気良くサラリーマンの人々やカ…

36.『28歳』初めての告白。

りんへの想いは募るばかりだった。 28歳の7月7日、七夕。日曜日。 僕はチャットにログインした。 りんがオンラインだった。 りんに個人的に話しかけた。 「おぉ、かのん!どした?」 僕は勇気を振り絞ってタイピングをした。 「僕と付き合って下さい!」 し…

35.『27歳』確信の恋。

土曜日の夕方。 りんとじょじょと連絡を取り合って大名町の『折井の四季』という個室の料亭で待ち合わせた。じょじょとりんは先に到着していて僕は遅れて入った。 じょじょはあいも変わらずトボけていた。 りんも上機嫌で焼酎の『中々』という麦焼酎を呑んで…

33.『27歳』夜桜の恋。

春が来た。 日雇い労働者だった僕は元請け会社の 『夢田組』 という鳶、土工会社から引き抜きにあった。 月給25万円で会社から徒歩1分の所に会社が借りているアパートがありそこに住めるといった好条件だった。部屋は2階の203号室でロフト、簡易照明付きで天…

32.『26歳』石川で生まれた女-完結-

「あいあーむがーっちゃーいるど!」 小さな声を振り絞りながら鬼束ちひろを熱唱するアヤは握ったマイクは離さないタイプだった。鬼束ちひろが汚れてゆく。それにしてもオンチでしゃがれた声だ。 一通り歌うとアヤは僕にマイクで話しかけた。 「かのーん!ギ…

30.『26歳』タロちゃんの夏休み-完結-

網の上で焼いたキスを1番にタロちゃんが口に運んだ。 「うーまい!うまいよ!金ちゃんも食べて!」 僕もタロちゃんが釣り上げた焼きたてのキスをいただいた。 「ほふほふ!うまっ!ビールビール!」 僕とタロちゃんが騒いでいると家族連れのお父さんらしき人…

29.『26歳』タロちゃんの夏休み-前編-

8月下旬。 夏が終わる。 タロちゃんはビールサーバー設置業務会社で働いていて盆休みも返上して働いていた。 やっと細やかな夏休みをもらったらしく僕に金曜日、電話をしてきた。 「金ちゃん?今日金ちゃんの家に遊びにいくけど、 日曜日海釣り行かない?」 …

27.『26歳』最後の冒険-完結-

非常階段の踊り場で柳川さんがコホンと咳を1つして胸を張って言った。 「よし、そろったな。 最後の夜だ。 ハデにやろうぜ!」 「おーっ!」 手を振り上げると柳川さんが合図をした。 「出発だ、野郎ども!」 「はい!リーダー!」 柳川さんを先頭に僕達は…

26.『26歳』最後の冒険-後編-

仲間達との最後の夜が来た。 皆んなといつものように喫煙所で煙草を吸う。 他愛もない話しをしているとたまに煙草を吸いにやってくる『サカイ』という新人看護師が現れた。 「よう、仲良くやってるかい?オレも混ぜてくれ」 そう言うとサカイ看護師は内ポケ…

25.『26歳』最後の冒険-中編-

『太宰府公園』に行く途中で近くのコンビニで缶ビールとお菓子を調達した。 それからまた自転車を漕いでやがて太宰府公園に到着した。 僕達は公園の見晴らしがいい高台に腰を下ろして缶ビールとお菓子を地面に並べた。 「太陽が気持ちいいね!」 えみちゃん…

24.『26歳』最後の冒険-前編-

季節は8月上旬。 夏真っ盛り。 喫煙所で僕にアイスコーヒーを作ってくれるえみちゃんがいた。 いつものメンバーで煙草を吹かしていた。 7月に入って僕はすこぶる晴れた心になった。 僕は思いついたように今週中に退院しようと心に決めた。かれこれ9ヶ月も入…

23.『26歳』えみちゃん奪還-完結-

非常階段の3階の踊り場に着いた。 柳川さんの表情が硬くなった。 「ここから気を引き締めていくぞ!」 3階のA-3病棟の非常口の扉を静かに開いた。ノブがガチャッと音を立てた。腰を沈めて暗闇に光るナースステーションの灯りに歩いていく。 開放病棟と違って…

22.『26歳』えみちゃん奪還-中編-

図書室の端っこのテーブルの上で閉鎖病棟の見取り図を柳川さんは開いた。 「俺も昔閉鎖病棟A-3病棟に 入院したことがあるが念には念を入れて、 ここからA-3病棟まで行く地図を頭に叩き込むぞ」 皆んなで閉鎖病棟の見取り図を食い入るように見た。柳川さんは…

21.『26歳』えみちゃん奪還-前編-

仮退院、最終日。 今日は金曜日で昼過ぎには病院に戻る日であった。 10時頃から僕は缶ビールを片手にパソコンの前に座るとヤフーチャットにログインした。 『芋部屋』を探すとカテゴリーに表示されているのを見つけた。さっそく入室する。 -- kanon_kamenoサ…

20.『27歳』仮退院、少年甲斐-完結-

「甲斐ちゃんは今日何時に福岡を出発するの?」 甲斐ちゃんはニヤニヤした。 「金田は寂しがりやさんだなー!6時ぐらいだよ!」 僕は不覚にも照れてしまった。 「だって、たちいったこと言うかもしれないけど わざわざ平日に甲斐ちゃんも骨折れてるのに 夕方…

19.『27時』仮退院、少年甲斐-前編-

仮退院3日目。 朝、子供達を学校と幼稚園に瞳ちゃんと見送ると僕は麦茶が入った水筒と瞳ちゃんに作ってもらったサンドイッチのお弁当を持って1人で釣りに出かけた。那珂川町にある野池に向かう。そこの野池はタロちゃんと2人でよく行く釣り場で安定した釣果…

18.『26歳』仮退院、焚き火-完結-

タロちゃんは上半身を川の中で脱いで服に川魚を包むと流れの激しい川をもろともせずに岸まで泳いで帰ってきた。 「やったよ金ちゃん!おれ達やったー!」 「タロちゃんやったね!途中から釣りじゃなかったけど!」 僕も膝までびっしょり濡れたがタロちゃんは…

17.『26歳』仮退院、焚き火-中編-

腕時計は5時15分を回った。 釣りを始めてから3時間が経過した。魚のアタリはまだ無い。 しかし毎度のことながら僕達は日没になっても釣れるまで時間が許すまで釣りをやり倒す。 なんせ初めての川釣りで仕掛けはブラックバス用だ。まさに未知の世界。 酒はた…

16.『26歳』仮退院、焚き火-前編-

5月の昼下がり。 僕は病院を外泊することになった。 柳川さん達には1週間くらいで戻りますと伝えて病院を後にした。 入院して5ヶ月になるが家族、親戚は誰1人とお見舞いに来なかったが何故か僕はその方が良かった。身内にはもうウンザリだったからだ。タロち…

15.『26歳』青春の天体観測-完結-

病院は地上6階まである。 屋上を入れれば7階になる。 5階まで登ると僕以外皆んなバテてしまった。 「もう2時10分ですよ!」 僕が皆んなを急かすと柳川さんがはあはあ言いながら、 「金ちゃんはガテン系だから俺らを一緒に したらダメだぜー」 と言いながら煙…

14.『26歳』青春の天体観測-中編-

「ハカセに!??」 柳川さんが言った言葉に5人はどっと驚き湧いた。 「今の時期なら木星や土星が肉眼でも見れるぜ ハカセからも色々話しを聞こうぜ!」 僕は話しを聞くだけでハラハラドキドキした。 「でも屋上なんて看護師許してくれるかな?」 えみちゃん…

13.『26歳』青春の天体観測-前編-

太宰府病院はとにかくバカでかい病院だ。売店に何回行っても迷子になりナースステーションで自分の病棟を教えてもらう羽目になる。 僕の病室は4人部屋で僕を合わせて3人入院していて僕は廊下側で隣の窓際のベッドに男性が1人、向かい側に10代らしき男の人が1…

3.『17歳』発病。

せっかく客も付いてきたバンドだったが僕はベースの人間性に愛想を尽かし脱退するとギターとドラムと香織ちゃんに相談したんだった。 香織ちゃんは猛反対したがギターは「金ちゃんが辞めるなら俺も辞める」と言い、ドラムも同意見で香織ちゃんは涙を飲んだ。…

2.『16歳』世間は甘くないなあ。

初夏。 震える手で客にお冷やを運ぶ。 こぼさないように。 リンガーハットなにわ店にて勤務中、バイト中。時給510円。働く事は尊い。 その頃は今の電動鍋ではなく12人前ぐらいのでっかい中華鍋を振っていたのを思い出す。 何はともあれ6月、16歳になった僕は…