アルコール中毒ROCK

酒と病気と音楽と人生を転がり倒す。

18.『26歳』仮退院、焚き火-完結-

タロちゃんは上半身を川の中で脱いで服に川魚を包むと流れの激しい川をもろともせずに岸まで泳いで帰ってきた。

 

「やったよ金ちゃん!おれ達やったー!」

 

「タロちゃんやったね!途中から釣りじゃなかったけど!」

 

僕も膝までびっしょり濡れたがタロちゃんはなんせ水泳してきたのである。頭からつま先までびっしょりだった。

 

 

「とりあえずタロちゃん服脱いで焚き火に

   あたりなよ!風邪引くよ!」

 

「いや、車に会社の作業着とタオルがあるから

  着替えてくる!金ちゃんのズボンも、

  おれのならあるから着替えようよ!」

 

いきなりサワガニ食べだしたりタロちゃんは本当に野生的で男らしい友達だった。

 

 

車の中で僕達は着替えを済ませてから焚き火にあたった。

 

 

「あったけー!」

「あったかいねー!」

「やっぱ金ちゃんはやる時はやる男だね!」

「タロちゃんも泳ぐ時は泳ぐ男だね!」

「うん!」

 

 

 

さて、川魚を食べる時がきた。お腹が空いた。

「タロちゃん、この川魚なんて名前かな?

   ヤマメ?」

タロちゃんも考えた。

 

「ヤマメは簡単に釣れないて聞くけどなあ、

   ニジマスじゃないね、模様が違うっぽい」

 

イワナ?」

イワナ?」

 

まあ食べてしまえばなんでも一緒という結論に行き着いた。

 

川魚は塩で洗ってさばくことは僕達も知っていた。とりあえず塩コショウしかないのでそれで代用することにした。

僕はしっかりと塩コショウで川魚をこすり川の水で洗い流した。

 

 

魚をさばくのはタロちゃんの仕事になった。

「30センチくらいはありそうだよね、

   半身に切り分けて割り箸じゃ燃えちゃうから

   石焼きにしよう!」

 

僕はグウグウなるお腹をおさえてうなづいた。

 

平べったい石を探してきて焚き火の薪の上に乗せた。

その間にタロちゃんは川魚を開いて半分に切り落とし内蔵を取り出した。

僕は焚き火にどんどん薪をくべて石を焼いた。

20分ほど石を焼くと川の水の水滴を石の上に垂らしてみた。水滴は一瞬にして蒸発した。

僕とタロちゃんは顔を見合わせて今が焼きどきと2枚におろした川魚を石焼きにした。

 

 

タロちゃんが煙草を一服しながら夜空を眺めた。

「やっぱ都会と違って星が頭に振ってきそうだー」

 

僕は病院での天体観測を思い出した。

 

僕も夜空を見上げた。

「本当に星がたくさんだねー」

 

 

僕達はあほみたいにぽかーんと夜空を一緒に見上げいた。

 

 

 

「金ちゃん、

   くさいこと言っていい?」

 

 


「タロちゃんらしくないね!

   いいよ!」

 

 

 

タロちゃんは煙草の煙を思いっきり夜空に吹きかけると呟いた。

 

 

 

「おっさんになっても

   ずっとばかなことして遊ぼうやー」

 

 

 

僕は照れているタロちゃんに、

「もちろんさ!」

 


とだけ伝えた。

 

 

 

 

魚が焼ける香ばしい香りがしてきた。

タロちゃんが煙草を消して枝で魚の様子をうかがった。

 

「そろそろ焼けたかな。

   まずおれが味見してみるよ!」

 

そういうと石のテーブルに焼けた川魚を置いて割り箸で身をちぎった。美味しそうな湯気が立ち上る。

タロちゃんは白身を口にほおばると大声で叫んだ。

 

「う、うまい!!うますぎる!

   金ちゃんも食べて!!」

 

僕も石のテーブルに焼けた川魚を置いて白身を口にほおりこんだ。

 

「ふまあいっ!!ふまいよー!!あつっ!」

 

「金ちゃん!これは焼酎だよ!

   空の焼酎のカップがあるから

  川の水で割って呑んでみ!」

 

僕は急いで空の焼酎カップに水を入れてタロちゃんに焼酎で割ってもらった。

 

「ふはー!焼酎あうー!」

 

「な?な?あうでしょ?」

 

僕はまた川魚を食べながら焼酎を呑んだ。

まだ残っていたピーマンやエリンギも割り箸に刺して焼いて食べた。

 

 

「しかし、本当に釣れるとは思わなかったな!」

タロちゃんの本音が出たところで僕達は笑い転げた。

「タロちゃんが泳いでくれなかったら、

   釣れてなかったよ!」

「釣ったんじゃないよ!獲ったんだよ!!」

また僕達はゲラゲラ笑ってはしゃいだ。

 

 

 

 

 

話題は尽きなかった。

腕時計は11時を回っていた。

 

 

僕達は片付けに入った。

燃やした木のクズやゴミはスーパーの袋に詰めた。火はこれまたスーパーの袋で川の水を汲み焚き火跡に掛けて鎮火させた。掘った穴は元どおりに整地した。

 

 

 

「タロちゃん、明日仕事なのに、

   遅くまでありがとう!」

タロちゃんはにっこり笑うと

 

「また来よう!」

 

と言ってくれた。

 

 

 

僕達は那珂川町の山を後にした。

楽しい大切な思い出になった。

 

 

 

 

また来よう。

 

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