42.『29歳』戦ぎの手紙
ある日僕は飛び降りるマンションを決めた。
泣きながらみーちゃんに遺書を書いた。
みーちゃん愛してるよ
みーちゃん愛してるよ
涙が止まらなかった。みーちゃん僕が死んだら悲しむかな。ごめんよ、みーちゃん。愛してるよ。
深夜0時が回った月曜日の真夜中。
僕は目的のマンションに向かおうと立ち上がった。暗闇の部屋の中で音楽テレビが放送されていた。僕は何気に立ち尽くしたままその番組を見た。
「えー、
1週間後にリリースが決まってます!
倒れてもう立ち上がれなくなった人達へ、
彼等、穣児さんの魂の響きを聴いて下さい!
クラッシュインアントワープから
戦ぎの手紙!」
走り出す時
僕はこの道をゆくよ
許された速度で歩く
乗り物なんていらない
季節の色彩を
愛でてゆこう
前へ
前へ
向かい風の中
今日の向こうが何も無きにせよ
風を漕ぎ出せば
僕は戦ぐはず
前へ
前へ
向かい風が止み
今日の向こうが見えて泣こうとも
小さな
小さな
瞳の煌めきは
小さな
小さな
心の星になる
僕ら戦いでく
素晴らしき道へ
素晴らしき未知へ
僕はボストンバッグに着替えの服や必要な物を詰め込んでいた。
これは死にたいんじゃない。
死にたくないのに仕方なく死のうとしていたんだ。そのことに気づき朝一で精神科に入院する準備をした。死んでたまるか。みーちゃんおいて死ねるか。みーちゃんは高齢のお母さんと住んでいる。僕が守らなきゃ。
Gショックがピーッとなった。4時だ。
僕は本当に久しぶりに柳川さんの携帯に電話した。
トゥルルルーッ
カチャッ
「柳川さんですか!朝早くすいません!金田です」
「何時でもいいさ、
電話待ってたぜ。
どうした?」
僕は柳川さんの声を聞いて号泣した。
全てを話した。
柳川さんは今、西山病院という南区の病院に入院しているらしい。何と当時のメンバーがいるとのことだ。
「僕、朝一でそちらに向かいます!」
柳川さんは落ち着いて言った。
「俺らがいるぜ。
変なこともう思うなよ金ちゃん。
今日待ってるからな!」
僕はまた号泣した。
朝7時、
僕はみーちゃんに電話で事情を話してわかってもらえた。
それから、
西山病院に原付バイクを
走らせた。
初めて神に感謝した日だった。
https://m.youtube.com/watch?v=8-7O5yGWGmY