アルコール中毒ROCK

酒と病気と音楽と人生を転がり倒す。

20.『27歳』仮退院、少年甲斐-完結-

「甲斐ちゃんは今日何時に福岡を出発するの?」

 

甲斐ちゃんはニヤニヤした。

「金田は寂しがりやさんだなー!6時ぐらいだよ!」

 

僕は不覚にも照れてしまった。

「だって、たちいったこと言うかもしれないけど

   わざわざ平日に甲斐ちゃんも骨折れてるのに

   夕方6時から愛知県に普通向かうかい??」

 

甲斐ちゃんは少し考えて、

「いつの時代も大人のやる事は

   不可解極まりないよ。

   逆もそうでしょ?金田や

   もっとうえの大人達にはおれらのやる行動が

   理解できないようにさー」

 

そう言うと甲斐ちゃんはまた口を開いた。

「いや、金田は他の大人とはちょっと違うかなー」

 

「そ、そうかな??」

 

と嬉しそうに言うと甲斐ちゃんは、

「精神年齢がきっと低いんだなー!ははー!」

だと。

やっぱり生意気な奴だ。

 

「金田は仕事してないの?

   大の大人が平日昼間からビール呑んで釣りしてー」

 

僕は正直に今の現状を甲斐ちゃんに話した。

「僕は心の病気で入院していて、

   今は病院を外泊中なんだ。

   仕事は休業中だよ」

 

甲斐ちゃんは少し心配そうに言ってくれた。

 

うつ病?金田は優しい奴だから、

   心が疲れたんだなー」

 

僕は寂しくうなづいた。

「優しいかどうかはおいといて、

   心は疲れているかもしれないかな。

   釣りをしていると心が休まるんだよ」

 

甲斐ちゃんはふんふんとうなづくとおもむろにズボンのポケットからなんと煙草とライターを取り出した。

「甲斐ちゃん!煙草も吸うの!?」

 

煙草に火をつけた甲斐ちゃんは煙をはいた。

 

「そうびっくりすることじゃないさー

   友達もみんな吸ってるよ!」

 

もう17歳だもんな。酒も煙草もそりゃやるか。

「甲斐ちゃん、音楽はどんなの聴くの?」

 

バンプオブチキン!」

 

「おお!この前Mステで天体観測歌ってたよ!」

 

「観た観た!カッコいいよね!

   ボーカルのあのイっちゃってる目が好き!」

 

僕達は意気投合した。

「甲斐ちゃん、右手が治るのどれくらいかかるの?」

 

甲斐ちゃんは右手に目をやった。

 

「医者は2ヶ月くらいて言ってたから、

   2ヶ月後にバス釣り再開さー!」

 

「早く治ることを祈ってるよ!」

 

 

甲斐ちゃんは腕時計を見た。

僕もそれにつられて腕時計を見た。

時計の針は3時を回っていた。

甲斐ちゃんが立ち上がった。

 

「金田、おれそろそろ行かなきゃ」

 

僕も立ち上がると甲斐ちゃんに竿を渡した。

「これ、せんべつの竿。甲斐ちゃんにあげるよ!」

 

甲斐ちゃんは笑いながら言った。

 

「もらえないよ!それに釣り師の竿は、

   サムライの刀みたいなもんだろ?

   サムライが刀無くしてどうやって戦うのさー!」

 

甲斐ちゃんの言う通りだ。

「2人の思い出に何かあげたいんだよー」

 

甲斐ちゃんは少し考えておもむろに僕のルアーボックスから僕の手作りの最新作のルアーを手にした。

 

「これが欲しい!」

 

僕は驚いた。ルアーなら他にも価値があるルアーを沢山持っていた。その中から僕の下手くそなルアーを甲斐ちゃんは欲しがった。

「そんな下手くそなルアーより

   もっといいルアー持っていきなよ!

   何個でもいいよ!」

 

甲斐ちゃんは僕の手作りルアーを眺めながら言った。

 

「これ1つでいい!

   このルアー見たら金田を思い出すよ!」

 

僕は寂しくなって不甲斐にも涙がこぼれてしまったら、

 

「なんだよ金田!泣くなよう!わははー!

   日本にいる限りいつかどこかで出会えるさ!」

 

涙をふいた僕に甲斐ちゃんは左手にしていたGショックを外して僕に渡して言った。

 

「これお年玉で買ったGショック

   その安物腕時計なんか付けてないで、

   大人ならこういうの付けなよ!

   あげる!!」

 

僕は手のひらでGショックを押し返した。

「僕の下手くそルアーと

   Gショックを交換なんてできないよー!」

 

甲斐ちゃんは差し出したGショックを受け取らなかった。

 

「時間を見る度におれを思い出して泣くがいいさー!」

 

僕は泣きながらGショックを手首につけた。

「甲斐ちゃんも釣りする度に僕のルアーを見て

   僕を思い出してね!」

 

「1投目で釣り糸が切れて金田のルアーが

   が飛んでいったりして!わははー!!」

 

僕と甲斐ちゃんは笑顔で笑った。

 

 

「じゃあ金田!またいつの日か会おう!

   あでぃおす!!」

 

 

去って行った甲斐ちゃんにずっと僕は手をふり続けた。

 

甲斐ちゃんのGショックがピーッと鳴った。

Gショックが4時をつげた。

 

 

 

風のような少年だった。

 

http://sp.nicovideo.jp/watch/sm27140369

f:id:kanedanobaiku:20180525134710j:plain